口述専門センター

口述落ち体験記


                          口述落ち体験記
                                                                  2009年口述落ち 小林功

【感想】
 まず論文試験合格発表までは、論文に合格することを想定しておらず、また去年は口述不合格者がまだ少なく、自分なら大丈夫だろうという過信もあり、多少青本(特許のみ)を眺めるだけだった。
そして論文試験の合格発表があり自分が合格していることを確認すると、即座に自分で作成していた口述模試リストに基づき、各会派や予備校が行う口述模試に、10つ申込した。こんなに申込をしたのは、(1)定員が合格発表日で一杯になること、(2)できるだけ多く受けた方がいいという先輩のアドバイスからだった。
 しかしながら、模試を受け過ぎて、自分で勉強するまとまった時間がとれず、体系的な勉強ができなかった。結局、青本読み込みや、条文・趣旨の暗記が不十分のまま試験を受けることになった。
ただし、いままでの口述試験合格者の話を聞くと、何も勉強していない人でもほとんど受かっており、また回答が解らなくても試験官が助け舟を出してくれるという話を鵜呑みにし、自分も大丈夫だろうと思い込み、何も不安にならず試験を受けた。

 ところが・・・当日の試験は、いままでの合格者の話とは違っていた。後になって、口述試験の不合格者にこそ話を聞けばよかったと後悔した。

 試験は、2009年10月19日の午前だった。
 控室には、受験生が19名ぐらいいて、私の席は先頭から15番目だった。
 したがって、2時間程待たされた。その間は、条文をひたすら読んでいた。
 試験が始まると、特許では、第4問目に「日本国を自己指定する国際特許出願があります。この場合国内優先権を主張しますが、国内優先権の主張ができる根拠は何ですか?」と聞かれ、「条約の要請によります」と答えたら、根拠条文の番号と、条文内容を述べてくださいと聞かれた。その後、色々と答えたが、先に進ましてもらえず、この問題だけで4分以上費やしてしまい(どうやらPCT8条(2)(b)とその条文を答えて欲しかったようだ)、後の問題に対する答えも総崩れとなった。後になって青本に書いていたと思い、青本の重要性に再度気付かされた。
 次に意匠では、第4問目に「次に事例問題です。意匠権Aを有する意匠権者甲と、意匠権Bを有する意匠権者乙がいます。ここで、意匠権Aと意匠権Bの類似意匠が重複する部分を意匠権Cとします。甲と乙は、いずれもCに係る意匠を実施できますか? 」と聞かれ、第5問目に「乙が後願の場合に実施するためにはどうするか」と聞かれた。第5問目では、予備校お得意の答えだと思い、挙げられるものを全て挙げたつもりだったが、他にはありませんか?という質問が10回ぐらい来て、時間オーバーとなった(どうやら同日ならば問題なく実施できるという話をしてほしかったらしい)。
 最後に商標では、第3問目に「国際出願は、フランス、スペイン語、英語ででき、日本の場合は英語で記載しますが、その根拠を教えてください」と聞かれた。これも条約が根拠なのかと思い色々と答えたが、結局正解にならなかった(どうやら商標法施行規則の番号を答えて欲しかったようだ)。それ以降は、正解なのか間違っているのか教えてくれないまま、質問→回答→次の質問→回答の流し形式となった。
試験が終わってすぐ、落ちたなと思っていたら、案の定不合格だった。
 1000人中200人の一人となったのだ。その後の一年は口述だけのための苦しい勉強期間となった。

 以上から、(1)不合格者の話を聞いて勉強に活かすこと、(2)条文・青本は論文試験直後から読み込んでおくこと、(3)初めての受験の場合は勉強期間が短いため模試を受け過ぎないこと、の3点が口述試験対策として大事だと思った。

【試験内容】
まず、特許。
総括質問はなかった。

特許では、国内優先権とパリ優先権についてお伺いします。

第1問目
国内優先権を主張する場合に、出願時にする手続きは何がありますか?条文通りに答えて下さい。
  →主張をする旨を記載した書面を提出します。
それだけですか?
  →・・・・先の出願番号を記載します。
確かにそうなんだけど条文どおりに言うと?
  →・・・・条文を参照してもよろしいでしょうか?
いいですよ。
  →先の出願の表示を記載した書面を提出します。
そうですね。

第2問目
パリ優先権の場合は出願時に何の手続きが必要ですか?
  →優先権の主張をする旨の書面を提出します。
それだけで良いんですか?
  →その書面に先の出願の日を記載します。
確かにそうなんだけど、条文どおりに言って。
  →・・・・・西暦を記載します。
ははは。確かにね。でも、条文通りでないね。もう一回。
  →年月日を記載します。
はい。そうですね。

第3問目
日本国を自己指定する国際特許出願があります。この場合どんな優先権を主張する?
  →国内優先権を主張します。

第4問目
国内優先の主張となる根拠は?
  →・・・・条約の要請によります。
もっと、具体的に。
  →・・・結局条文見たが分からず、あれこれ言っているうちに4分以上経過。ここのせいで、あとがぐちゃぐちゃになった。
 ここでは、特許協力条約8条(2)(B)の条文番号と条文内容を答えて欲しかったみたい。そんなん知るかボケ!!

第5問目
 ちょっと、先の問題ができないようだから次に進みます。国内優先は取り下げることができますか?
  →はい。できます。出願日から1年3月以内であればできます。

第6問目
 その主張はどんな場合に取り下げられますか?
  →はい。先の出願が取り下げ等されている場合です。
本当に?先の出願なの?
  →・・・・あっ、後の出願が取り下げ・・・拒絶査定。
うん?拒絶?
  →あっ

・・・・以上でおしまいです。

結局第4問目が答えられないまま時間切れになった(涙)

部屋が変わって、意匠の部屋へ。
意匠は完璧に条文通りにいうまで何回も繰り返された。特に、及び又はの違いでかなりつっこまれた。あとで聞いた話では意匠が一番論文の点が悪かったらしい。

意匠は、意匠権の侵害についてお伺いします。

第1問目
意匠権の効力は?条文通りにいってね。
  →はい。業として登録意匠又はこれに類似する意匠の実施をする権利を専有します。
本当ですか?
  →・・・・(完璧だと思ってたからすこしパニックになった。。)
登録意匠か類似意匠のいずれかしか専有しないの?
  →あっ、はい。「及び」ですね。
そうですね。はいもう一回最初から。
  →はい。業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有します。

第2問目
 登録意匠の範囲は、条文上どのように定められますか?
  →登録意匠の範囲は、願書に記載され又は願書に添付した図面に記載   され又は願書に添付した写真、ひな形若しくは見本により現された   意匠に基づいて定めます。
条文通りでないですね。はい、もう一度。
  →・・・・(ここも、なにが違ってたかわからなかった)。
これはね、願書か図面等のいずれかから判断されるの?
  →あっ、また「及び」が抜けてました。
そうだよね。はい、もう一度。
  →登録意匠の範囲は、願書に記載され及び願書に添付した図面に記載   され又は願書に添付した写真、ひな形若しくは見本により現された   意匠に基づいて定めます。
本当ですか?まだ、条文通りでないよ?願書にも意匠が記載されるの?
  →あっ。はい。登録意匠の範囲は、願書に記載した事項及び願書に添   付した図面に記載され又は願書に添付した写真、ひな形若しくは見本により現された意匠に基づいて定めます。
まだ、不正確ですね。まあいいでしょう。次にいきます。

第3問目
登録意匠の類比はどうやって判断される?
  →はい。需要者の視覚を通じた美感に基づいて行います。
う〜〜ん。条文通りでないね。はい、もう一回。
  →・・・・需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行います。

第4問目
次に事例問題です。意匠権Aを有する意匠権者甲と、意匠権Bを有する意匠権者乙がいます。ここで、意匠権Aと意匠権Bの類似意匠が重複する部分を意匠権Cとします。甲と乙は、いずれもCに係る意匠を実施できますか?
 →それは、どちらが先願でしょうか?
両者を含みます。
 →それでは、いずれか一方が実施できます。
そうですね。まあ、先願者のみですね。つまり抵触してるんですよね〜。

第5問目
さて、乙が実施する場合にはどうする?
 →甲から通常実施権の許諾をしてもらいます。また、裁定もあります。
いきなり裁定ですか?
 →・・・あっ 話し合いをします。
え?その話し合いを条文通りにいうと?
 →・・・う〜〜〜〜〜〜〜協議をします。
ふむ。そうだね。
んで、他には?
 →え?あっはい。無効審判を請求したり、譲渡放棄交渉をします。
他には?
 →え?まだあります・・・・・か?
ありますよ。
 →・・・・・・・
同日出願の場合には?
 →はい。その場合には、抵触という定義に当てはまりません。
じゃあ他には?
 →甲乙同日出願の場合、実施できます。(→本当は、9条2項違反の無効理由を言わせたいんだと思う)
・・・・まあ、いいでしょう。
 以上で、意匠法はおわります。


商標は、論文の点が良かったのか、雑談で2分以上使った。
試験官から、まず総括質問。やさしい白髪のおばあちゃんだった。
へ〜あなた特許事務所で働いているのね。明細書作成補助業務ね。
  →はい。そうです。
同じ事務所に受験生いる?
  →はい。います。
じゃあ、一緒に口述の練習やった?
  →はい。結構やりました。
そうですか、そうですか。ところで、意匠の口述はどうでした?
  →ぜんぜんできませんでした。
特許はどうですか?
  →特許もできませんでした。
論文はどうでしたか?
  →商標が一番できなかったと思います。
いや= あなたは商標が一番できてますね。意匠が悪いですよ。
  →えええええ〜〜〜 そうなんですか、意外です。
そうなんだよね。自分の感触と実際の点数はけっこう違うんですよね。

さて、質問です。商標はマドリッド議定書の特例です。
第1問目
 日本国内の出願に基づいて、フランスにいる(ここは不明)フランスの法人は、直接国際事務局に出願を行えますか?
 →できません。
じゃあどうするの?
 →日本国特許庁に手続きを行います。
そうですね。

第2問目
 国際出願は、フランス、スペイン語、英語でできますが、この場合は何語で記載しますか?
  →英語で記載します。

第2。
根拠は?
 →・・・・・・・・・・・。根拠条文はありません。
本当ですか?
 →・・・・・条文集を参照してもよろしいでしょうか?
え?条文集みるんですか?
 →載ってないですよね・・・(ここで40秒ぐらいは経過した)。
第3問目
 まあ、いいでしょう。後で聞きます。英語で記載するのは願書だけ?
 →必要な書面も英語で記載します。
・・・まあ、いいでしょう。

第4問目 
国際商標登録出願の出願日はいつになりますか?
 →国際出願の日です。
本当に?
 →国際登録の日です。
他には?
 →事後指定の場合は、事後指定の日です。
そうですね、国際登録簿に記録された日なんですね。

第5問目
事後指定の定義は?
 →日本国を領域指定したものです・・・(ありゃ、やばい、わからん)
う〜ん。領域指定であって国際登録後のものを言います。よろしいですね?
 →はい・・・・。

第6問目
 存続期間の更新登録は、日本国特許庁に対してできる?
 →はい。できます。

第7問目
 それは何条に規定されていますか?
 →68条の18です。
そんなに後ろなんですか?
 →はい。違いますね。・・・・68条の5です。
そうですね。

第8問目
 国際登録に基づく商標権の存続期間は?
 →国際登録の日から10年です。
他には?
 存続期間の更新がされている場合には、直近の更新の日です。

第9問目
 では、答えられなかったところなんだけど、英語でできる件ね。
 あれはね。商標法施工規則に書いてあるのよね。そして、68条で商標法規則を準用しているの。
 →・・・・・はい。勉強します・・・・・・

以上で商標は終わりです。山は当たった?
 →・・・いいえ(笑)

商標は、ほとんど試験官が助けてくれた。


はあ・・・・・・もう1年勉強すんのか?これ。。

やめてほしい。
しかも、ちょっとマニアックなところがでてきたら、1年勉強しても成果が出せない気が・・・


                    合格体験記

・・・そして、1年後、必死で勉強した後、口述試験を受けた。
以下その内容。

【感想】
試験は、特許が3分ちょいで直ぐできてしまって、憂かれ、舞い上がってしまい、雑談の時に、去年200人「落とされた」と口がすべってしまい・・・
なんであんなこといったのか意味不明です。幸い試験員は笑い飛ばしていましたが、いまでもそれが気になってます(汗)

教訓として、早く終わったからといって、気を抜くなとみなさんに伝えておきます。
あと、意匠は、午前もそうでしたが、一言一句全部条文通りにいわされました。特許は、わりかし、甘かった感じです。

【試験内容】
特許
特許では、法定通常実施権についてお伺い致します。


問題!特許法には法定通常実施権として何が規定されていますか?
答え!先使用権、中用権、後用権です。

質問!中用権と後用権とはもう少し正確に?
回答!条文の見出しレベルで答えた

質問!先使用権を受ける者は誰ですか?
回答!条文通りに答えた

質問!先使用権の範囲はなんですか?
回答!条文通りに答えた。(ここで、ちょっとつまづき条文を参照させられた)

質問!先使用権の趣旨はなんですか?
回答!公平の観点からです。

質問!誰と誰の間の公平なのですか?
回答!先に実施した者と後に出願した者との間です。

質問!先使用権はどういう場合に移転できる?
回答!実、承、相です。

質問!さきほどの中用権と先使用権の大きな違いはなんですか?
回答!中用権には対価を支払う必要がありますが、先使用権は支払う必要はありません。

以上で特許法は終わりです。
時間が6分以上余ったので雑談しましょう。
なんで弁理士目指した?
勉強のコツは?
今は何してる?
など永遠と雑談が続いた。

意匠
出願についてお伺いします。
質問!出願するためには何を提出しますか?
回答!願書と図面です。

質問!願書には何を記載しますか?
回答!条文通りに答えた

質問!図面には何を記載しますか?
回答!意匠を記載します。(意匠を記載しますだけでは、許してくれなかった)

質問!本当に?もっと正確に答えてください。
回答!意匠登録を受けようとする意匠を記載します。(結局条文を参照した)

質問!図面に代えて何を提出できますか?
回答!意匠を記載します。

質問!雛形、見本には、大きさ以外で何をきをつけなければなりませんか?経済産業省令に記載していますよ。
回答!答えたられなかった。よって最後にまわされた。

質問!材質又は大きさがわからないために意匠を認識できないときはどうしますか?
回答!材質又は大きさを願書に記載します。

質問!機能に基づいて変化する場合は何を記載しますか?
回答!その旨と物品の機能の説明を記載します。

質問!その旨とは具体的に?
回答!いわゆる動的意匠を受ける旨を記載します。

質問!色彩はどういうときに省略できる?
回答!図面などに意匠の色彩を付するときです。

質問!では最後に。先の問題で、経済産業省令で定める雛形と見本の規定?
回答!・・・長期に保管できる場合です。
試験官!近いね。壊れないようにするとか、形状が変化しないようにする必要があるんですよ。

では、以上で意匠法は終わります。お疲れ様でした。

商標
商標では侵害についてお伺いします。

質問!商標権の効力は何条に規定されていますか?
解答!25条と37条1号です。

質問!25と37一項一号の権利は一般的に何と呼ばれていますか?
解答!専用権と禁止権です。

質問!なぜ禁止権までみとめてる?
解答!禁止権の範囲では出所混同が生じる可能性があるからです。

質問!他の理由はありませんか?たとえば商標の本来的機能を考えてください。
解答!自他商品等識別機能から、同一の範囲では狭いからです。
う〜ん、といわれて解答を教えてくれた。けど内容を忘れた。

質問!商標権の侵害とは?
回答!レジメ通りに専用権と禁止権の侵害を答えた。あと予備的行為も答えた。

質問!他には?
回答!防護標章の場合の侵害があります。

質問!防護の侵害は何を侵害することになるの?
回答!商標権です。

質問!侵害があったとき商標権者は何ができる?
回答!差し止め、信用、損害、不当利得返還請求です。

質問!差止の条文番号は?
回答!36条1項です。

質問!損害は?
回答!民法709条です。

質問!信用回復の条文は?
回答!準用する特許法106条です。

質問!ほかにできない?よくテレビにでるのは?
回答!え〜〜〜
あっ刑事罰です。

質問!直接侵害と関節侵害で刑事罰は異なりますか?
回答!違います。

質問!具体的にどう違いますか?
回答!直接侵害では10年以下の懲役又は1千万円以下の罰金なのに対し、間接侵害では5年以下の懲役又は500万円以下の罰金になります。

試験官!よくできましたね。あと5分以上時間が余ったので雑談しましょう。
今回はできたと思いますか?等々

以上